漬物

Daikon_3 凛とした冷たい空気の朝、大根は畑から取られて来た。少し寒さが緩んだ午前中、庭の作業場で洗われてベッピンさんになって出番を待っている。傍らでヨメの圭子さんが漬物をリズミカルに切っていく。日当たりのよい場所で清子おばあちゃんが八つ頭を出荷用に整える。

「ここにお嫁に来てから毎年ずーっと白菜を漬けているよ、Kiyokotukemono_3 何年になるかも忘れちゃったねぇ」楽しそうに笑う。「茎の部分は多めに、葉は少なめに硬さを見ながらカンで塩加減して漬けるの。今でこそ私が少し手伝うけど、数年前まで一人で全部やってたものね。」圭子さんが続ける。冬の間、おばあちゃんは一度に20個以上の白菜を切って塩して、大きな樽で2度漬けする。

圭子さんは大根担当。青首でゆず大根、三浦で甘酢漬け、京千枚で千枚漬を漬ける。タカの爪や切り混布、ゆずなどアレンジは変われど、塩、砂糖、酢の調味料は同量。なのに出来上がりの味はそれぞれ別のお漬物だ。ゆず大根はさくさくと歯切れよく、甘酢漬は大根の甘みと少々の苦みがしっかりと、千枚は粘りのあるみっちりした甘さ。息子の金雄さんは木の樽でたくあんを漬けるのだと聞いた。

Keiko
初めて玉縄の農家を訪ねた10年ほど前、「我が家の味を食べてお行きなさい」と漬物を勧められた。その飾らないあったかさが素晴らしくおいしかったのを思い出す。家族各々が担当して作り、白菜漬からたくあんまで素材の味がすっと立って、ちょっと甘くて懐かしい。清子おばあちゃんちの漬物は今も「我が家の味」を鮮やかに伝えている。

清子おばあちゃんの漬物は鎌倉市農協連即売所で(鎌倉市小町1-13-10 お問い合わせ:JAさがみ0467-44-3851)