「鎌倉やさいって何?」とよく聞かれる。京野菜のように聖護院ダイコンや京ニンジンなどの特別な種類があるわけではなく、鎌倉で育てられた野菜。それらは仲卸を通さずほとんどが直売される。
鎌倉市農協連即売所は下馬交差点近くにある歴史ある大きな直売所。鎌倉市と一部横浜市の農家約30軒が加入して、建物内の6~7店のブースで日替わりに自家製の野菜、果物、花などを販売する。飾りっ気なく置かれた取れたて野菜を求めて、地域の人やレストランのシェフなどが朝早くから買いに来る。一つのブースがいわば一軒の八百屋さん。だから少しづついろんな種類の野菜を置く必要がある。こうして鎌倉の畑は一区画の2~3畝が小松菜で隣の畝が高菜で次がレタスでと、少量多品目の野菜が育てられる。年2~30種を5~6毛作するから土作り、雑草取り、虫退治などに丹念に手間暇かける。直売だから可能なこと。こんな様子を誰が呼んだか「七色畑」。確かにほかの耕作地では考えられないほど多種類で色とりどりの野菜たちにいっぺんに出会えるのだ。
農家の山森さんは年60種!もの野菜を作る。ほうれん草、大根などのオーソドックスなものから葉マスタード、からし菜、オータムポエムなんて耳慣れない名まで。直売所で「ミックス」として売られる多種類の葉物の一把は人気。「その時のおいしいものを組み合わせるんだよ」野菜の個性を知り尽くした達人の味の組み合わせは、ほろ苦くて甘みがあって薫り高い絶妙なサラダになる。作り手の顔が見え、少量多品目で丹念に作られた新鮮で安心な鎌倉やさい。
近頃その畑の真ん中に生ごみ処理場を作る計画が出た。そんな食品にそぐわないもの建設しないで、鎌倉やさいの良さをこれからも守ってほしいな、と心から思う。
◆鎌倉市農協連即売所(鎌倉市小町1-13-10 お問い合わせ:JAさがみ0467-44-3851)
ミックス野菜のサラダ 手前:生ハムと卵のタルタル
左:チコリボートの上に大根の葉のピリ辛、塩もみ大根、ほうれん草のおひたし
奥(グラスに):エンダイブ、バジル、葉マスタード、からし菜、ルコラ
野菜とタルタルを一緒に食べると味が引き立つ。