ゆり

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夏の間、鎌倉の玉縄地域ではユリをよく見かける。高貴な花だというのに、アスファルトで固められた路傍に、山の斜面に、川の土手にと、結構ところ構わず気さくに2株ぐらいづつ咲いている。山ユリは神奈川県の花でもあるが、鎌倉はユリの里ともいえるほど、多数のゆりが自生しているのだ。

6月の終わりごろから咲き始めるのは山ユリ。茎は長く花は白く大ぶりで人目を引くのだが、大き過ぎて自分の重さを支え切れずに倒れる茎もよく見かける(^ ^;)。 おひさまが良く当たるところは早めに、少し条件が悪いところは遅めに咲き、夏の間中見られる。8月の半ばごろからは高砂ユリ。茎もすっきりと細身で、花も白くスマート。 もともとは台湾から観賞用に輸入されたものだそうだが、いつの間にかワイルドにそこらへんで自生している。お盆の頃は鎌倉の玉縄地区のそこかしこに両方の種類の花が見られて、まさにユリの里の面目躍如。Yuri4_2

昭和のはじめから30年代まで、ゆりは玉縄地域の「特産品」だった。早朝小学校に出る前、子どもたちは自生するユリを採って鎌倉駅の近くまで売りに行ったという。市場には野菜とともにユリの花も出荷された。ユリ栽培の農家があり、国内はもとより根を食用とする中国や、ガーデニングが盛んなヨーロッパへ輸出し、とりわけ英国王室や観賞植物の流通が盛んなオランダで好まれたという。栽培で財をなした農家の家は「ユリ御殿」と呼ばれるほどりっぱ。県立フラワーセンターでも幾多のユリが開発された。

「特産」のユリはどこに行ってしまったのだろう?いつの間に消えてしまったのだろう?鎌倉・玉縄の豊かさを、自然と人の調和を映していただろうユリ。栽培する農家も今はなく、点々と自生するユリに「夢のあと」を想うばかりだ。

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