きゅうり&トマト

Sugiura  この記事を書く瞬間を、わたしはどれほど待ったことだろう。関谷に予定していた生ゴミ処理用地取得を鎌倉市はあきらめた。ご協力くださったみなさま、ありがとうございました!

「これで安心して、農業が続けられる。署名をしてくれた人にお礼を言わなくちゃ。」このニュースを聞くと、農家の杉浦さんがさっそく言った。杉浦家の耕作面積は鎌倉市で屈指の広さ。主にキュウリとトマトをハウス栽培し、通年でスーパーに直接出荷する。「今の時期、平均すると一日に千本のきゅうりを出荷してるよ」・・・え、ほんとうに?3回も聞き返してしまった。「昨日は調子が良かったので2千本取れた」・・・!!

Yuwakasi 見せていただいたきゅうり用のハウスは、確かに近隣で一番広そうだ。中は夏の様に湿度のある暑さ。畝の間からパイプが見える。「お湯を通して冬場の土の温度を上げているんだよ。お湯はこの瞬間湯沸かし器のお化けみたいなので沸かしてるんだ。だからコストも安く済むのさ」通年でほぼ同じ温度に管理し、収穫量が一定になるよう時期をおいて苗を植え育てるのは、コストの上でも手間でも大変なこと。ハウスの中とはいえ、気候や苗自体の強さに左右される、結局は自然相手の作業だ。「だから作戦が大事なんだ」苗の種類を選び、肥料のタイミングや虫よけを設置する時期を決める。そんなノウハウを杉浦さんは「作戦」というのだ。作戦はいろんなところで生きている。仲卸を通さず、直接スーパーに出すこと。ニーズの多い野菜を常に出荷するため、グループを組むこと。消費者とともに歩むため、地産地消を大切にすること。鎌倉野菜を生かすため、生ゴミ処理施設建設計画をつぶすこと・・・。

Kyuriillu_2  目線を合わさずシャイに笑う。でも「どうだい」ってカンジが漂っていて、やんちゃ小僧がちょっと誇らしげにしてるみたいだ。そりゃ1日にきゅうり2千本も収穫できたら、自慢しちゃうよね。花をつけた、小さくて可憐なキュウリから、もう出荷できるぐらいたくましく育ったものまで、ツルと葉っぱの間から、頼れる杉浦さんを見つめているようだ。

「トマトも見てよ」のお誘いに乗ってお邪魔したのは隣のハウス。何やら水路の上に厚いスポンジ状のものがあり、ちょこんと乗った鉢からトマトの苗が伸びている。このロックウールというスポンジの一種は、花屋さんでブーケをさす時見かける。パイプからそこへ水が直接流れ、とどまることがない。ここは鎌倉で唯一のロックウール水耕栽培ハウスなのだ。

Tomatone 広くて整然とした内部では、先週植えたというトマトの茎がすくすくと勢いよく伸びている。小さなビニールの鉢からさらに延びた根っこはロックウールの深部まで達している。この時期は成長が早いのだが、今年は一層早くて力強いのだとか。コンピューターでデータを管理する水耕式の農業でも、昨年と全く同じというわけにはいかないという。ついたばかりの 小さなトマトの実を見ると、機械と人間の作る「作戦」が、野菜というちょっと気まぐれな自然を一生懸命育てているんだ~と理解できる。

地域のみんなと、野菜を愛する人の踏ん張りで、生ゴミ処理施設が関谷にくることはなくなった。杉浦さんが仲間と共にブレずに守り抜いた鎌倉野菜は元気に育ち、今日も食卓においしさを届けている。

Tomato1_2 杉浦さんは6月に神奈川県の園芸功労賞を受賞した(鎌倉からは30年ぶり2人目!なのだそうな)。その野菜はフジスーパー大船店(0467-45-9311)の鎌倉野菜のコーナーで販売しています。

関谷生ゴミ処理施設建設反対にご協力くださった皆様に、心よりお礼を申し上げます。