やっぱり目が行くのは市場。昨日まで何もなかった広場に、突然市がたつ。まだ空が暗い朝の7時には、テントの列に美しい明かりがともる。光の先には色鮮やかな野菜や肉が照らし出される。
寒い日で吐く息が白い。その向こうに、やっぱり白い息の笑顔がある。
「どこから来たの?」
「取材かい?ハンサムに映してくれよ!」
「ウチのチーズはおいしいよ、写真撮り終わったら、食べてよ」
冷たいとか、無愛想とか言われるパリジャンが、市場ではとても人懐こい。声をかけ、話し、笑い、いたわってくれる。野菜や肉などを取り巻いて、地元の人の普通の生活がみえる。たいていそれは、あたりまえであったかい。
この一年さまざまな土地に行った。どこの国でも食材の向こうには真摯な笑顔があった。
育てて食べるって、とても大切で幸せなことなんだ。シンプルな思いに帰着できることが、ウレシクて誇らしい。