「ちょっとおもしろい農家がいるよ」と旧知の農家さんから紹介された石井宏兒(いしいこうじ)さん 。鎌倉の関谷で代々続く農家の長男で、関谷の鎌倉しろやま幼稚園の副園長先生で、レインボーズファーム鎌倉の代表です。

「除草剤、化学農薬を使わず、有機物などを使って土作りから野菜を育てています。 年間120種類ぐらいを作って売っています。鎌倉では、まあ普通の規模かな。料理の幅を広げるいろんな味を作りたくて野菜の種類も多いんです。例えば、今、元気なナス、この庄屋大長ナスは実がしっかりあって、焼きナスに向く。同じ長めのナスでもこちらは色が鮮やかな、あじムラサキ。油との相性がよく、ぶつ切りにして素揚げするといい。野菜を渡すときにはそんなことも説明しますよ。」
おお!さすが副園長先生。幼稚園児だけでなく、学校などで学生さんに授業する機会もあるそうで、説明もテンポよくわかりやすい。
「収穫体験も受けています。幼稚園や小学校の子どもなどが来ます。だから農薬は使わない。葉や茎まですぐに口に入れてしまう子どももいるから。でも化学肥料は使ったりします。」
私が会った多くの農家は「おいしい野菜を作りたい」と話すけれど、宏兒さんは「おいしく野菜を食べてもらいたい」というタイプのよう。元調理師という経歴もうなずけます。

除草剤を使わない畑の手入れも、刈り取った草を入れ込んだ土づくりも、間隔をあけて作られた畝も、虫との戦いも。。。無農薬の野菜作りはとても手がかかるし収量も限られるけれど、それでも石井さんがこのスタイルにこだわるのは、「おいしく安全に食べてもらう」ことに結び付いているからでしょう。畑で育つ野菜や体験授業の様子、野菜の調理写真などをアップしたレインボーズファーム鎌倉のインスタはカラフルで「おいしそう」。
「収穫した野菜は、直接販売しています。知り合いのレストランに収めたり、家の敷地にある販売用の小屋で、火曜と金曜にとれたての野菜を対面で売るのです。そこで野菜の味について説明したり、聞かれれば料理法を話します。お客さんとコミュニケーションとることまで含めての野菜作りだと思っているから。」
おお!少量多品目、直売・直卸が特徴の鎌倉野菜の農家の王道。

別日にうかがった販売小屋はキュートで、石井宏兒さんとお母さんの圭子さんが小屋の棚に広げた野菜を説明しながらかわるがわる販売していました。先日手入れしていたナスも、ちゃんと出ています。他の野菜もイキイキしていて、全部おいしそうで、あれこれほしくなっちゃう。

石井さんの家では野菜の他に圭子さんや娘さんが作った天然酵母のパンも売っているのだそう。お父さんと宏兒さんの弟さんが幼稚園を主に運営し(理事長と園長先生)、宏兒さんとおかあさんが中心になって農業を担い、それぞれ助け合う。一家で力を合わせてこの土地で働き、暮らしている。そのみんなの力がつまった「野菜」を、いろんな世代の地域の人たちと話しながら売って、食べてもらっているんだな…。そんなふうに思える「興味深い」鎌倉野菜の農家でした。
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