とてつもない震災が日本を襲ってしまった。あまりのことに言葉が出ない。
日々の小さな地震とその情報は、さらなる不安をあたえる。原発は、不夜城の幻想を求めたわたしたちに災いを与える。まるでバベルの塔の伝説みたい。
それでも、こんなことでわたしたちは終わりじゃない、と、どこかで楽天的に信じている自分を感じる。そう、これで終わりじゃない。きっとまた立ちあがる。だって、ここには豊かな海も、大地もある。
震災の起こる前、 3月の初めに、漁師さんの手伝いをした。1月の半ばから春一番の吹く3月半ばまでは、鎌倉わかめのシーズン。三浦半島から鎌倉あたりまでの漁師さんはこの時期ワカメを収穫する。鎌倉は主に養殖。11月半ばにワカメの苗をロープに差し込み、それを沖合100メートルほどのところに浮きを使って田型に浮かべる。広大な海の畑。それがワカメの養殖場。
寒さもピークになる1月半ばから、漁師さんは船を出しワカメを刈り取る。帰るとハマでは仲間がお湯を沸かし待っている。湯がいてみごとな緑色に 変色したワカメを、ハマに組んだ干し場に干していく。目にも鮮やかなワカメを見ると、本当に心躍る。収穫!って感じがする。
完全に水分が抜けた干しワカメが完成するには、寒いハマの北風と太陽の力を借りても2~3日が必要だ。朝一で作業をはじめ、お日様と競争しながら、多くのワカメを干し、日が落ちる前に取り込む。この期間がワカメをおいしくするから、みんな力を合わせて必死で作業する。素人の私たちの手伝いでも、役に立ったりする。そうして一包み1400円の鎌倉ワカメが出荷されるのだ。
鎌倉は春一番が吹き、養殖の後の天然もののワカメも収穫を終えた。いまは春の漁が始まり、サザエやアジが取れている。今のハマではこうした収穫とともにワカメも買える。
震災の映像を見るたび、海が牙をむく恐ろしい瞬間を見せつけられ、身がすくむ。コントロールなどできない。それでも、この豊かで偉大な海に、わたしは引き寄せられる。どうか暴れないで、と願いながら、静かに海に寄り添いたいと思う。それは人間の本能のような気がする。
鎌倉の海にいらっしゃい。